コールセンターの“ニューノーマル”を実現するCRM選定のポイント
企業従業員の在宅テレワークが急速に拡大する中、パンデミックの影響を最も受けている業務の1つがお客様相談室の業務である。多くの企業は、受付時間の短縮やオペレーター数の抑制などで対応しようとしているが、長期化を見越し、オペレーターにもテレワーク導入を進めるなど、“ニューノーマル”を模索する動きも出始めている。こうした中、ますます重要になってくるのが、「コールセンターCRM」の役割である。
コロナ問題が、次世代コールセンターを後押しする形に
多数のオペレーターが閉鎖空間で声を発しながら業務にあたるコールセンターは、元来、クラスター感染の条件が揃った職場である。そのため、多くの企業が一定期間コールセンターの閉鎖に踏み切ったり、オペレーター人数を制限しつつ営業時間を短縮したり、対応をメールやチャットなど非音声系に限定して、オペレーターの在宅勤務を導入するなどの対応に追われた。
幸い日本においては爆発的な感染拡大にはならず、5月25日に緊急事態宣言が全面解除されるに至ったが、新規感染は引き続き発生しており、もはやコロナ以前には戻れないというのが世の中全体の認識となりつつある。コールセンター業務も例外ではなく、withコロナを前提とした“ニューノーマル”の模索がはじまっている。
しかしながら具体的対策を見ていくと、いずれもコロナ以前から、既存の課題を解決するために求められていたテーマであることに気づく。期せずして、コロナ問題が次世代コールセンターへの変革を一気に加速させることになったという訳だ。
コロナ対策と重なる次世代コールセンターに向けての課題
例えば、下記に挙げるような3つのテーマ(解決・改善すべき課題)は、次世代コールセンター実現の鍵としてコロナ以前から盛んに言われていた。
●働き方改革(テレワーク推進)
国や自治体の旗振りもあり、ここ数年トレンドワードとなっていた“働き方改革”。テレワークの導入は、企業規模や業種を問わず拡がりを見せているが、企業のコールセンター(お客様相談室)業務は、こうした流れから取り残され気味であった。スーパーバイザー以下、複数のオペレーターがCTIなどの専用システムを利用して、ワン・チームで効率的に対応する必要があり、全員が1ヵ所に集まる形からなかなか脱却できなかった。
だが、コロナ対策では、その職場環境こそが問題であり、分散型でのオペレーションに移行せざるを得なくなっている。一般社団法人日本コールセンター協会が2020年5月1日に発表した「コールセンターにおける新型コロナウイルス感染症対策に関する指針」では、下記2項目を含む9項目を企業に要請している。
- 情報漏洩などセキュリティ対策を十分に講じた上で、 可能であれば在宅勤務への移行の検討・推進をお願いします。
- 特定の拠点に集中することなく、他拠点に業務を分散させることで、密集・密接を回避できる業務運営の検討・推進をお願いします。
実際にこうした流れを受け、すでに、オペレーターが自宅にいながら従来同様に業務を遂行できる分散型CTIシステムの構築に踏み切った企業事例も報告されている。
コールセンターにおける働き方改革(テレワーク推進)は、家事や育児や介護などの傍ら、スキマ時間で業務復帰する経験者を掘り起こす効果も期待できる。コロナ問題が、慢性的なオペレーター不足というコールセンター運営の課題解決を後押しすることになるかもしれない。
●マルチチャンネル化
コロナ以前からコールセンター業務については、マルチチャンネル化がトレンドとなっていた。その理由は、若年層の電話離れにある。インターネットやスマートフォンなどに慣れ親しんで、その便利さにどっぷりと浸かっている生活者にとって、電話によるコミュニケーションはもはやレガシーであり、どちらかと言えば“使わないで済むのであればそうしたい”ものでしかない。それよりは、メールやチャットなどテキストベースのコミュニケーションを好む傾向が強い。お客様相談室を含むコールセンター業務において、マルチチャネル化をはかり電話偏重の応対から脱却することは、CS向上を追求する上で不可避であった。
そしてコロナ禍は、ここでもマルチチャンネル化のトレンドを後押しすることになりそうだ。いまでこそIP化でCTIシステムとの統合が進む電話だが、在宅勤務のオペレーターにつないでこれまで通りコールセンターを運営するには、膨大な時間とコストをかけて新しいシステムを構築する必要がある。これに対し、メールやチャットなどテキストベースのデジタルコミュニケーションであれば、在宅勤務のオペレーターに割り振って応対させる仕組みの実現は比較的軽微で済む。
実際、コロナ対策でオペレーターのテレワークを導入した企業において、メールやチャットでの応対を在宅勤務で行ってもらっているケースは多い。
●AIなど新技術を活用した自動化
自動化による業務効率化も、マルチチャンネル化同様、次世代コールセンターに向けての重点課題である。IVRやFAQでの問い合わせ対応を標準化と自動化できれば、電話での有人応対への流入を減らすことができ、オペレーター不足を緩和して労働環境を改善することにつながる。さらに一歩進め、最新のAI技術を搭載したチャットボットを導入すれば、オペレーターへの依存度低減も可能になる。
実は、一般社団法人日本コールセンター協会も、前述の2項目に続けて次の項目を要請している。
- Webによる受注・申し込み、IVRやFAQによる自己解決、チャットボットによる自動化対応など、有人対応によらないチャネルの提供やセルフサービス化を図るとともに、お客様には一定期間ご不便をおかけすることを周知した上で、ご利用を勧めることの検討・推進をお願いします。
昨今は、AI技術の進化が目覚ましく、音声の自動テキスト化なども実用レベルに近づいているという。AI活用でオペレーターのリソースを真に有人対応が求められるシーンに重点投入できれば、全体としてCS向上につながるだろう。
今、改めて考えるコールセンターCRMの選定ポイント
今回の新型コロナ問題では、一過性の短期的なものではなく、世の中全体で大胆な行動変容をともなう長期的な取り組みが求められている。その意味では、今後もコールセンターの “ニューノーマル”を模索する動きが続くものと考える。
こうしたなかますます重要になってくるのが、過去の対応履歴を一元管理して、より的確な対応を可能にする「コールセンターCRM」の役割である。在宅勤務で対応するオペレーターにとっては、既存のコールセンターのように支援するスタッフが周囲にいないため、お客様の情報を共有することができる唯一の存在であり、「コールセンターCRM」にどれだけきめ細かく情報が集約されているかが、対応品質を大きく左右するためだ。
まずは、非音声系に限定して在宅勤務化を進める…というケースでは、当然、メールやチャットとの連携性にすぐれるツールを選びたい。オペレーターの自己解決レベルを高めるという意味では、過去の対応事例をベースとしたFAQの充実も欠かせない。大量のFAQの中から参考となる事例を効率よく探し出すことができれば、その情報を参考にして的確な応対をすることができるため、FAQの検索性は重要なポイントだ。業務効率化という点では、音声の自動テキスト化やFAQ資産を活かしたチャットボットなどのAI技術で実現する新しい機能にも注目したい。
特に新型コロナ対策で伸びている食品関連ECや料理配達サービスなどの場合、ちょっとした対応の不備が大きな二次クレームに発展してしまうリスクがあるため、的確な対応を支援する「コールセンターCRM」の役割は大きい。こうした業種・業界のコールセンター(お客様相談室)向けCRMとしておすすめしたいのが、富士電機ITソリューションの「CSStream」だ。2000年に発生した食品メーカーの食中毒事件を契機に登場。食品業界を中心に製造業など幅広い業界・業種のコールセンターで採用され、ユーザ数は10万人以上を誇る。コールセンターの“ニューノーマル”を実現する「CSStream」の様々な機能については、こちらの動画をご覧いただき、選定の参考にしていただきたい。